東京地方裁判所 昭和37年(ワ)8899号 判決
判 決
第一、当事者
一、原告
北区神谷町二丁目二三番地の二
福知勝一
訴訟代理人弁護士
栗田恒三郎
二、被告
北区袋町一丁目一九七一番地
北交通株式会社
代表者代表取締役
小久保伊三郎
訴訟代理人弁護士
吉田朗
第二、主 文
一、原告の請求を棄却する。
二、原告は訴訟費用を支払え。
第三、事 実
別紙(第三回準備手続調書別紙)の通りである。なお、被告は、予備的抗弁として、次の通り主張した。
株式譲受人である訴外小久保は、株式譲渡人である原告に対し、株式引渡請求権を有し、他方原告は被告に対し株券発行請求権を有するので、小久保は自己の債権を保全するため原告の右権利を代位して行使し、昭和三七年三月二日被告より株券の交付を受けた。
第四、証拠≪省略≫
第五、理 由
一、請求原因事実は当事者間に争いない。
二、抗弁事実を認めることができる。即ち、甲一12、乙一―三、四、12、(以上の乙号証はいづれも被告代表者小久保の供述によりその成立を認める)六、七号証及び証人(省略)被告代表者小久保の各供述及び証人(省略)と原告本人の各供述の各一部を綜合すると、次の各事実が認められる。
1 右の小久保が中心となつて、昭和三三年頃より、タクシー営業を行うことが企画され、まづ昭和三四年に東京陸運局長に対しタクシー営業の免許を申請したが却下され、次いで昭和三六年に再度申請したところ、同年八月三一日に免許が得られた。
2 タクシー営業の申請及び免許には営業所(車庫)用地が必要であり、本件においては、原告所有の土地約二〇〇坪がそれにあてられることになり、原告と被告会社発起人代表である小久保との間に、昭和三六年一月三一日右土地の賃貸借契約が結ばれていた。
3 右免許後、同年一〇月六日に、小久保及び原告等を発起人として被告会社が設立されたが、その際、原告は、右土地提供の代償の一部として、株式六〇〇〇株を、払込金三〇〇万円を自己の出捐によつて払込むことなく取得した。
4 右免許の申請及び被告会社の設立運営は、主として小久保が行い、原告は、前記土地を車庫用地として提供してその対価を得ることの外に、被告会社の経営について何等の関心はなかつた。
5 その後、同年一〇月頃、右土地の賃貸借の条件について原、被告間に交渉がなされたが、折合いがつかず、結局、一一月一五日頃、原告と小久保は、前記賃貸借契約を解除し、且つ、同時に、原告は被告会社より一切手を引くこととなつて前記株式六〇〇〇株を社長となつた小久保に返還譲渡することとし、他方、小久保は、原告に対し、原告の蒙つた損害(これは、原告は株式払込金を支払つていないのであるから、昭和三三年頃より約三年間右土地を使用できなかつたことに帰する。)を填補する意味で、原告が購入した乗用車一台の代金の一部九三五、〇〇〇円を原告のために支払い、且つ原告に対する立替金四一四、〇〇〇円の債権を放棄することを合意した。
6 右合意当時株券は未発行であつた。
以上のような経緯の下に、第5項の合意がなされた場合は、右合意に際して、株式譲渡人である原告は、譲受人である小久保に対し、株券が発行された場合には、自己に代つてその交付を受ける代理権を与える旨の黙示の意思表示をなしたものと認めるべきである。
又、前記の証拠によれば、株券は昭和三七年三月一日に発行され、被告会社は小久保に対し、そのころ本件株券を交付したことを認めることができる。
三、予備的抗弁については、判断の必要がない。
四、訴訟費用の負担について民訴法第八九条適用。
昭和三九年二月一四日
東京地方裁判所民事第八部
裁判長判事 服 部 高 顕
判事 武 藤 春 光
判事補 宍 戸 達 徳
原告の主張
(請求の趣旨)
被告会社は、原告に対し、被告会社の原告名義の株券六、〇〇〇株を作成交付せよ。
(請求の原因)
一、被告会社は、昭和三六年一〇月六日に設立れた会社であり、その発行済株式数は四万株、一株の金額は五〇〇円、資本の額は二、〇〇〇万円である。
二、原告は、被告会社の発起人であり、設立に際して右会社の株式六、〇〇〇株を引き受け、払込期日までにその払込をなした。
三、従つて、原告は、被告会社に対し、右株式の株券の作成交付を請求する権利を有する。
(抗弁に対する認否)
代理権授与の事実は否認する。株券交付の事実は不知。
被告の主意
(請求の趣旨に対する答弁)
請求棄却
(請求の原因に対する認否)
一、認める。
二、認める。
(抗弁)
原告は、訴外小久保伊三郎に対し、昭和三六年一一月一五日、被告会社より本件株券の交付を受ける代理権を与え、被告会社は右訴外人に対し、昭和三七年三月二日、本件株券を交付した。